てぃーだブログ › 向井わらびー広場

【PR】

  

Posted by TI-DA at

2017年06月02日

ホームページの更新について

7月からホームページの更新を考えて現在作成中です。
今のホームページ自体が自由な変更が不可能なために、7年前に作成した時のものとほとんど変化がなく使いようがない、と判断をして作り変えます。
大幅に作り変える予定ですが、基本の骨格は変化なしです。
知りたい情報をなるべく短時間で伝えるように心掛けるつもりですが、一方もっと知りたい方には詳細な情報を提供するのも私たちの使命ですので、そのどちらにも応えられるようにするつもりです。
また、予約システムの運用の方法や受診の仕方、院内の紹介などを、もう少し詳しく記載をするつもりです。
お手数ですが、今年7月以降、ホームページは登録し直してください。

  


Posted by ひげの小児科医 at 18:40

2016年09月27日

Flumist Quadrivalent(4価フルーミスト)の案内;2016年

インフルエンザの予防接種の時期になりました。
今年もまたFlumist(フルーミスト)を実施することとしました。
正式にはFlumist Quadrivalent(4価フルーミスト)といいます。
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、過去のフルーミスト接種者の分析から、予防効果はあまりなし、との結論を最近出していますが、メーカーは反論をしています。そのような意見があることは承知おきください。
私個人としては予防効果ありと信じますので、だからこそフルーミストを接種します。
10月3日(月)から予約を受けます。
朝10時までは一般診療の電話が多いために、電話での予約は毎日午前10時からとします。
発注はしてありますが、11月以降の入荷予定で入荷日が不確定ですから、最悪の場合には入荷がない(つまり接種できない)可能性がある点は是非考慮ください。
Flumistはインフルエンザ生ワクチンで、国産には同等の商品はありません。
従ってFlumistを接種すれば、注射でのインフルエンザワクチンを接種する必要がありません。
点鼻ワクチンですので痛みはありません。
生ワクチンですので、注射での不活化ワクチンより長い抗体の維持が期待できます。
たぶん1年間ほど続くか、と考えています。
適応年齢は、2歳以上で49歳以下です。
喘息を持っている方は、接種をすると喘鳴を起こす可能性が増えるとされていますので、喘息の方はFlumistは接種できません。
以前にインフルエンザの予防接種を受けている方は1回接種ですが、2歳から8歳まででこれまでインフルエンザの予防接種を受けたことがない方は、一ヶ月以上空けての2回接種となりますが,入荷本数が少ないために、2回接種が必要な方は対象外とします。
同時接種はきちんと研究されていませんので、原理としては安全だと思いはしますが、フルーミスト単独接種のみとします。
接種後の副作用として最も多いのは、いわゆる風邪症状(鼻水、鼻づまり、のどの痛みなど)が若干増えるかな、という程度です。
生ワクチンですので、妊婦さんは駄目ですが、授乳中の母親にも投与可能です。

限られた本数の注文ですので、予約でいっぱいになった場合には、その後の予約は中止します。
予約する方は、以上の事情を理解したものと考えます。
最後になりましたが、年齢を問わず一回9000円とします。  続きを読む


Posted by ひげの小児科医 at 12:20クリニックからのお知らせ

2015年09月10日

予防接種の受け方について(2015年9月)

「予防接種の受け方(改訂)」を以前に書きましたが、その後の予防接種をめぐる状況に変化があり、改訂します。基本的な考え方には大きな違いはありませんが、現在3種混合ワクチン(DPT)が入手不可能で、現4種混合ワクチン(DPT+ポリオ;セ―ビン株)を使うしかないので、そのあたりが最も大きな変更点です。セ―ビン株については後ほど述べます。
少し長くなりますが、軽い気持ちで終わりまで読みとおしてください。そうすれば、私の考えが判る、と信じます。
多少生々しい話もあります。

まず,予防接種で防げる病気は、最悪の場合は命を落とす病気である、という事実です。命を落としたり、後遺症が残って一生不便な生活を送るようにならないために予防接種がある、ということを心に刻んでいただきたいです。決して「受けても受けなくてもよい」ものではありません。また、病気に罹ると集団生活できない学習面でのマイナス面、また保護者は仕事を休まなければならない等の経済的な負担もかかります。また自分が病気にかかることで、兄弟や周りの人にその病気をうつしていろいろな迷惑を掛ける可能性があります。
「自分の子どもはかからない、かかるはずがない」のではなく「かかる可能性が少しでもあるのなら予防する」と考えてください。

実際に起こったことを書きます。
私が最初に沖縄に来た2001年には麻疹(はしか)が流行していました。那覇市立病院の小児科外来で診察をしていたらすぐ隣の診察スペースであわただしい動きがあり、何が起きたかとのぞきに行きました。そこでは、男児が痙攣したあと呼吸が停止してぐったりとしていました。ぶつぶつで一見して麻疹と判りました。その場で管を口から気管まで通してバッグで呼吸をさせたまま台に乗せられて入院となり病棟では機械で呼吸をさせました。その6歳の男の子は結局意識が戻ることなく(つまり問いかけに一度の反応もなく)一週間ほどして亡くなりました。これが麻疹脳炎です。その男子は麻疹の予防接種は受けていませんでした。
京都大学医学部卒業後に最初に赴任した(1995年)大阪の病院に併設されていた乳児院では麻疹が流行ってしまいました。予防接種をするにも保護者の同意が必要なので、それがなかなか進まない状況でそうなりました。
私が主治医となった当時8ヶ月の女児も麻疹になりました。1歳未満なので麻疹の予防接種は受けていませんでした。発熱してぶつぶつが出てきて麻疹と診断して、水分と食事の摂取が充分ではなかったので、入院させて点滴を続けてその2日後の朝に診察に行ったときのことです。麻疹独特のぶつぶつが消えていました。熱が少し下がり、でも何となく元気なく顔が白くて変だな、とその時は思ったのですが、当時研修医であった私にはそれ以上のことは判りませんでした。診察中にだんだん呼吸がゆっくりとなって、目をつぶりかけて寝入ってしまいそうだったので、てっきり「眠いんだ」と思い込みました。すぐ横で1分ほど眼を離して次に見たときには、一見すると熟睡している様子でしたが胸が上下に全く動いていない(=呼吸していない)ことに気が付きました。私はあわてて上級医(指導医)を呼びました。あらゆる処置に反応することなく呼吸も心拍も再開することはなかったのです。そのあとに撮った胸部のレントゲン写真では、両肺とも真っ白で麻疹肺炎でした。医療者になって初めての患者さんの死には大変大きなショックと敗北感を受けました。
麻疹の発疹は通常はだんだん黒くなって消えていきますが、それがすぐに消えるのは重症化のサインです。
麻疹が流行ると予防接種を受けていない1歳児あるいは1歳前の児がかかることが多いのです。
麻疹は、このように命に関わる可能性がある疾患ですし、百日せきや、水痘・おたふくかぜやロタウィルス感染症などでもそうなる可能性があります。誰にでもそういう可能性があるからこそ予防が大事なのです。

ロタウィルスでは脳炎の患者さんを診たことがあります。激しい嘔吐と下痢で那覇市立病院を夜間に受診して点滴をしましたが、数秒間のけいれんと嘔吐が止まらずにそのまま入院となりました。2歳の女の子で翌朝診察にいったら、目は左を向いて開いたままで瞬きせず、全身が全く動かない状態でした。が、かろうじて呼吸はしてはいましたが。起こそうとすると首がだらっとしてまるで首が座っていない赤ちゃんのようでした。抱っこをしても全身に力が全く入っていませんでした。もちろん言葉への反応も全くありませんでした。看護婦さんに訊いてみると、深夜から明け方に掛けても短時間のけいれんはずっと頻回にあったようでした。脳炎の特徴である、発熱と意識障害、けいれんがすべてそろっていました。でも治療法がありません。その子は、ちょうど赤ちゃんが大きくなっていく過程の様に、まず瞬きし始めて首を左右に振ってその後に首が座り、寝返りをしてお座りを自分でして、つかまり立ちから独歩へと、最終的には歩けるようになりました。確か2カ月間ほどかかったと記憶しています。しかし、後遺症が残りました。歩き方が少し変(ぎこちない)で、また走ると転びやすくなって、微細な運動ができなくなりました。たとえば、食事の時に上手に箸が持てないのでスプーンで食べていました。また衣類のボタンの掛け外しもできなくなりました。

予防接種を受ける順序で大事なのは、何歳頃にどういう病気にかかりやすくてどれほど重症になりやすいか、という点と、その病気の現在の流行状況です。最近は予防接種の種類が増えてきたので、混合ワクチン(2種類以上の成分が含まれているワクチン)が日本では開発がまだ十分ではない現状では、同時接種(一日のうちに2種類以上の予防接種をうける)がお勧めです。同時接種は、受診する回数(つまり病院を訪れる回数)を減らすことで、待ち時間や他人との接触による感染を減らすことができますし、スケジュールを順調に終わらせることができます。また注射による「痛い思い」はなるべく少ない受診回数で済ませる方が、子供さんには良いのではないかと常々考えています。

スケジュールを組む上での当院の基本的な考えは以下の通りです。

接種を延期するとその間にその病気にかかる可能性があるので、「接種を待つ(つまり延期をする)」ことは誤りです。風邪(咳や鼻水の症状)や下痢・中耳炎やとびひなどでの抗生剤やシロップの内服で治療中であっても、予防接種は予定通りにします。そのような病気の場合でも抗体はしっかりつきますから。
市の健康診断で、予防接種に関して親子手帳(母子手帳)をチェックする機会がありますが、その年齢までに接種を済ませていないといけないものがまだ済んでいないことが結構あります。接種が遅れている理由を聞いたら、「忙しかったから(!)」、「体調がよくなかったから延期した」という保護者の責任での延期、そして「鼻水があったから延期してと言われた」「体調がよくなかったから延ばされた」「兄弟に風邪をひいている人がいるから延期と言われた」などの小児科医による延期があります。どちらも間違いです。
生後半年から1歳半頃までの重大な疾患にかかりやすい時期を予防接種なしで生きていくのは、予防接種が無かった時代で生活するのと全く変わらないのです。予防接種をさせずに、もし重大な疾患に罹り、命にかかわったり後遺症が残れば、それは悲惨です。

①定期であれ任意(接種をするかどうかは最終的には親が判断をする、という意味での「任意」(=意思)であり、受けても受けなくてもどちらでもよい訳では決してありません。受けた方が良いのは定期と同じです)であれ、予防接種すべてを同時接種で勧めます。
②4種混合・ヒブ・肺炎球菌を優先して(できれば3回を、生後6カ月までに)その後にBCG、を勧めます。以前はBCGは「生後3カ月以上で生後半年にならないうちに」でしたが、BCGよりも重要な他の予防接種を先に受けるのが大事なことと、3カ月頃にBCGを受けるとBCG接種によると考えられる結核性骨髄炎が増えることが判ったので、より大きな年齢へと接種期間が移動しました。
③1歳以上での水痘・おたふくかぜは、一回接種では充分な抗体獲得が期待できない(一回の接種では、それだけでは充分な抗体がつかない場合と、一旦充分に抗体がついても時間の経過とともに抗体が減って行く場合の両方)ので、水痘は最短3カ月以上空けて、おたふくかぜは最短4週間空けての2回接種を勧めます。
1回目が1歳で2回目の接種が5歳から7歳頃、というスケジュールは、確かに抗体が長持ちして流行していない国や地域の2回接種のスケジュールであり、水痘やおたふくかぜの患者さんが年間100万人近い日本では、5歳から7歳頃までの2回目の接種までにその病気にかかってしまう可能性があるの、接種間隔はもっと狭いほうがよいと考えています。
④日本脳炎は南アジア・東南アジア・東アジアの疾患であり、日本では南の地域ほど罹りやすい特徴があるので、「標準で3歳以上から接種」ではなく、公費の負担がある「生後6カ月から」の日本脳炎の予防接種を勧めます。
実際に日本脳炎に罹る可能性がまずない北海道では、日本脳炎は定期接種ではありません。地域のよって罹り易さが異なる日本脳炎の予防接種は、地域差があってもよいと思っています。
⑤2012年11月から導入された4種混合ワクチン(テトラビック・クアトロバック)は、他の4種混合ワクチンがなくまた3種混合ワクチン(DPT)が使えない状況では、それらを使います。現在の4種混合ワクチンの中のポリオ株は、2012年8月まで国内で使われていた経口生ワクチン<セ―ビン株>を不活化したワクチンで、世界中で使われている別の株<ソーク株>から作られたイモバックスポリオではありません。ソーク株ポリオの含まれる4種混合ワクチン(商品名スクエアキッズ)が登場すれば、全面的にそれを使います。
現在の4種混合のワクチンのメリットは、3種混合と不活化ポリオワクチンを一回の接種で終わらすことができる点だけで、デメリットは、セ―ビン株の不活化ポリオワクチンに歴史と実績が無い点です。製品ができてから数年しか経っていないので、当然ですが接種を終了して10年後や20年後の抗体の維持に関しては、何も判っていない訳です。その点ソーク株ワクチンンは既に20年以上の使用経験と累計3億本近い使用実績があります。
そういう理由で、長らく当院はDPTと単独不活化ポリオワクチン<ソーク株>を使用してきましたが、DPTの生産と流通が国管理となり、4種混合の代わりにDPTと単独不活化ポリオワクチンを接種することができないようになりました
実際にN市からは「別々に接種するのなら、今後は代金の支払いはしないし、予防接種の委託機関からはずす」と連絡(脅し?)がありました。浦添市からも、程度少し軽いですが同様の連絡がありました。おそらく、国から沖縄県、県から市町村へとその様な通知の伝達があったのだろうと推測します。
ですから今は4種混合でのソークワクチンは接種できない状況です。
⑥不活化ポリオワクチン(単独であれ4種混合であれ)は、日本でも他の国と同様にDPT形式(最初3回を4~8週間あけて接種をして3回目からおおむね1年後に4回目を接種する)での接種ですが、4~6歳での追加(5回目;自費)を勧めます。
諸外国では4歳以上でポリオの最終接種です。1歳半程で不活化ワクチンが終わってしまうと、抗体が長続きするはずがありませんから。
⑦ロタウィルスワクチンに関しては、3回接種のロタテックを勧めます。
ロタウィルスは冬場から春先に流行する子供の嘔吐や下痢の原因のウィルスのナンバー1です。嘔吐が続いて脱水となって入院となることが割に多いのですが、小児の脳炎では、インフルエンザ、突発性発疹を起こすウィルスについでナンバー3の原因ウィルスです。
⑧肺炎球菌13価(PCV13)を、7価肺炎球菌接種修了者に勧めます。アメリカではPCV7が終了した児はPCV13の一回接種を公費の負担で行いましたが、日本ではそれは「任意」(つまり公費の負担がない)となりました。一回接種で終了です。

以下が私が勧める接種法です。

<プラン1>;もっとも積極的な接種方法ですお勧めです。

生後2カ月;ヒブ①、肺炎球菌①、B型肝炎①、ロタ①
生後3カ月;ヒブ②、肺炎球菌②、B型肝炎②、ロタ②、4種混合①
生後4カ月;ヒブ③、肺炎球菌③、ロタ③、4種混合②
生後5カ月;4種混合③、BCG
生後6カ月;日本脳炎①
生後7カ月;日本脳炎②
生後8カ月;B型肝炎③
1歳   ;MR、ヒブ④、肺炎球菌④、水痘①、おたふくかぜ①
1歳1カ月;おたふくかぜ②
1歳3カ月;水痘②
1歳5カ月;4種混合④
1歳7カ月;日本脳炎③

1歳での同時接種を少し減らすためには、
<プラン2>

生生後2カ月;ヒブ①、肺炎球菌①、B型肝炎①、ロタ①
生後3カ月;ヒブ②、肺炎球菌②、B型肝炎②、ロタ②、4種混合①
生後4カ月;ヒブ③、肺炎球菌③、ロタ③、4種混合②
生後5カ月;4種混合③、BCG
生後6カ月;日本脳炎①
生後7カ月;日本脳炎②
生後8カ月;B型肝炎③
1歳   ;ヒブ④、肺炎球菌④
その1週間後に;MR、水痘①、おたふくかぜ①
1歳1カ月;おたふくかぜ②
1歳3カ月;水痘②
1歳5カ月;4種混合④
1歳7カ月;日本脳炎③

B型肝炎を少しあとで接種すると、
<プラン3>

生後2カ月;ヒブ①、肺炎球菌①、ロタ①
生後3カ月;ヒブ②、肺炎球菌②、ロタ②、4種混合①
生後4カ月;ヒブ③、肺炎球菌③、ロタ③、4種混合②
生後5カ月;4種混合③、BCG
生後6カ月;日本脳炎①、B型肝炎①
生後7カ月;日本脳炎②、B型肝炎②
1歳   ;MR、ヒブ④、肺炎球菌④、水痘①、おたふくかぜ①、B型肝炎③
1歳1カ月;おたふくかぜ②
1歳3カ月;水痘②
1歳5カ月;4種混合④
1歳7カ月;日本脳炎③

そして、1歳での同時接種を減らしたいのであれば、
<プラン4>

生後2カ月;ヒブ①、肺炎球菌①、ロタ①
生後3カ月;ヒブ②、肺炎球菌②、ロタ②、4種混合①
生後4カ月;ヒブ③、肺炎球菌③、ロタ③、4種混合②
生後5カ月;4種混合③、BCG
生後6カ月;日本脳炎①、B型肝炎①
生後7カ月;日本脳炎②、B型肝炎②
1歳   ;ヒブ④、肺炎球菌④、B型肝炎③
その1週間後に;MR、水痘①、おたふくかぜ①
1歳1カ月;おたふく②
1歳3カ月;水痘②
1歳5カ月;4種混合④
1歳7カ月;日本脳炎③

接種希望者の個別の事情で接種をする方法はたくさんありますが、極力早い時期に終了することをめざすのであれば、上記の<プラン1>がベストだと思います。

質問を受けることがあり、是非とも次の4点は書いておきます。

Ⅰ;自然に罹った方が免疫が強く付くかどうか、です。

確かにそれはそうかもしれません。が、忘れてならないことは、予防接種をしておかないと、命にかかわったり後遺症が残る可能性があることです。後遺症がなくまた重症化することもない病気に関しては、予防する意味もないので予防接種の注射を作る理由と目的がありません。「自然に罹った方が免疫が強く付くので予防接種はしない」方針の方は、いつ聞いてもそう思うのですが、自分の子はその病気にかからないし、あるいはかかっても命にかかわったり後遺症を残すことがないという「信念」が前提となっています。でもこれはただの「信念」、つまり「思いこみ」であって、皆がかからないのなら、この世に病気はありません!

Ⅱ;水痘やおたふくかぜは2回受ける必要があるかどうか、です。

予防接種を一回うけて水痘やおたふくかぜに罹った方が実際にたくさんいます(軽く済むことが多いです)。これこそが、一回接種では、その病気にならないためには不十分な証拠です。欧米では1歳に一回、その後4~6歳で追加の接種をする国が多いのですが、先に述べた通りにそれは「流行しない国」でのスケジュールです。現在の日本は、未だ定期接種になっていない事情から、年間数十万人の水痘・おたふくかぜの患者さんが発生する国です。なので、2回目は早い方がよいと考えます。1回目と2回目をどの程度あけたらよいかの世界共通の公式見解はありませんが、アメリカCDC(疾病予防管理センター)の発行する書物(通称、ピンクブック;Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases)では、水痘は3カ月以上、おたふくかぜは4週間以上あけて、と書かれていますのでそれに従います。
水痘では、水痘ウィルスでの脳炎や肺炎の重症、あるいは将来の帯状疱疹、おたふくは主には後遺症としての難聴を避けることが、ワクチンの狙いです。

Ⅲ;ヒブ・肺炎球菌は生後7カ月以上なら接種回数が3回に減るから、それまで待った方がよいか、です。
実際にそのように「指導」している小児科や内科があります(!)。が、もし、これが正しいのなら、1歳以上で接種をすればもっと回数が減り(ヒブは1回で肺炎球菌が2回ですから)、あるいは5歳になるまで待ったら、もう打つ必要が無くなってしまいます(!)。
ヒブ・肺炎球菌は、生後6カ月前頃から発症することが多い髄膜炎などの重症感染症の2大原因菌です。従って、生後6カ月頃までに十分の抗体(3回は必要)を付けておくことが必要です。予防接種は接種を「待って」も何のメリットもなくデメリットしかありません。
私が担当をした髄膜炎(ヒブと肺炎球菌が原因菌でした)の患者さんは、幸い全員が後遺症なく回復しましたが、髄膜炎は治療が遅れたりあるいは治療が失敗すると、命を落とす病気です。

Ⅳ;日本脳炎のワクチンは「標準が3歳」だから、早いうちに接種する必要があるのか、です。
平成23年7月に那覇(首里)在住の1歳の男の子が日本脳炎に罹り、後遺症(退院時には歩けなく眼も見えなかった)が残ったと聞いています。日本脳炎のウィルスに感染した人のごく一部の方に脳炎の症状<高熱、けいれん、意識障害など>がでます。従って、日本脳炎の患者さんが一名出た、ということは、日本脳炎のウィルスに感染した方がかなりいることになります。脳炎は、どんなウィルスが原因であっても、命を失ったり後遺症が残ることが多い最重症の病気です。日本の南部は、日本脳炎の抗体を持っている豚が多い(つまり、日本脳炎のウィルスに罹患した豚が多い)ので、それらの豚の血液を吸った蚊がヒトを刺すと、ウィルスが体の中に入る可能性が大きいのです。北海道では、日本脳炎は定期接種ではなく「任意」扱いです。であれば、地域によって実情に見合った接種の方法があるべきです。であれば、公費の負担が生後6カ月からある日本脳炎は、生後6カ月で接種を開始するべきです。
生後6カ月から2歳までは、3歳以上の一回量の0.5mlではなく、一回量が0.25mlです。これは、「2歳以下が副反応が多いから半分の量にした」(と説明している小児科があるそうですが)のではなく、インフルエンザの予防接種と同様に、日本脳炎の予防接種を申請する際に、生後6カ月から2歳までが一回に0.25ml、3歳以上が一回0.5mlで抗体の上昇が十分あったから
です。
日本脳炎の接種が「標準で3歳」となっている理由は不明で、調べても判りません。「流行する地域では生後半年から接種」、と世界保健機構(WHO)も行っているのですが。
「3歳までには他に予防接種がたくさんある」「2歳以下のこどもは日本脳炎にかからない」という、その理由らしきものは、どちらもが嘘です。
「3歳までの他の予防接種がたくさんある」と言われたのは、1歳までの予防接種がDPT、BCG、ポリオワクチンしかなかった頃のことです。接種で忙しいはずがありませんし、「2歳以下のこどもは日本脳炎にかからない」のは、罹った子供がいますから、嘘です。
私が主治医となった脳炎の患者さんは4名です。それぞれ原因はEBウィルス、インフルエンザ(A香港型)、ロタウィルス(上に述べました)、原因不明のウィルスでした。EBウィルスでの脳炎の男児は、発熱とけいれんで入院したその日に呼吸がとまり目を閉じることができなくなりました。その状態が2日間続きましたが、見事回復しました。脳の一部に空洞ができましたが成長・発達はその後も正常でした。インフルエンザA香港型での脳炎の女児は、1週間41度とけいれんが続きました。その頃はまだ診断キットも抗インフルエンザ薬(タミフルなど)もない時代です。熱が下がって退院しましたがその後は性格が変わり、またよく転ぶようになりました。そして原因ウィルスが不明だった中学3年生の女子は、救急に発熱と「立てない」ことで受診しました。4つんばいの状態でした。あまりにも変な様子なので入院をさせましたが、翌朝5時にけいれんして目が開いたままで呼吸が止まり、その後は機械で呼吸をさせました。最初のうちは問いかけにもわずかに首を振っていたのですが、その後は全く反応なしでした。そして状態がだんだん悪くなり約2週間で亡くなりました。
脳炎はそのような病気です。

今後の展望としては、

①成人で流行している百日咳の対策として、現在のDTをDPT(正確にはTdap)にする、そして海外での多くの国と同様に、4~6歳で5回目のDPTを導入する、つまりDPTが6回接種となる可能性です。4~6歳でポリオも追加する(5回目)のであれば、その時期に4種混合を一回接種すればよいことになります。
4種混合が1歳半頃に終了してしまっては、抗体が長持ちしないことが充分に予想されます。4~6歳での4種混合の追加が望ましいと考えています。
②接種間隔の見直しの動きがあります。「ワクチン接種をする場合、生ワクチンを接種したらその後は4週間、不活化ワクチンを接種したらその後は1週間、空ける」のは、世界的には珍しいので、アメリカのように「生ワクチン同士は最低4週間あける」だけ<つまり、不活化ワクチン同士や生ワクチンと不活化ワクチンとの間隔が一日でもよい>へ変更の可能性があります。ただそのような変更があっても、同時接種が良いと思います。
③ほとんどの不活化ワクチンに関しては、接種方法が、現在の皮下注射から、世界で広く行われている筋肉注射へと変更になる可能性があります。

今後は混合ワクチンが主流になっていくと考えられます。

例えば、MR+おたふくかぜ(MMR)、MR+おたふくかぜ+水痘(MMRV)、5種混合(DPT+ポリオ+ヒブ、DPT+ポリオ+B型肝炎)や6種混合(DPT+ポリオ+B型肝炎+ヒブ)<海外では既にそういう製品があります>がそうです。でもそうなるためには、すべてを定期接種化しておかなければなりません。
5種混合や6種混合にはポリオが含まれています。ここまで読んでこられた方は気が付かれると思いますが、日本はポリオのセ―ビン株での混合ワクチンを目指すのであれば、世界で広く使われている共通の株(ソーク株)とは異なるものになります。既存の5種混合や6種混合を日本に導入する場合に比べると、はるかに多くの時間と手間がかかります。また、多くの時間と資金を使ってそういう製品を作っても、日本だけの通用で決して世界標準にはなりえないと思います。日本がセ―ビン株にこだわるからこそ、混合5種や6種の混合ワクチンの製造が遅れているのです。なら、なぜ日本はセ―ビン株にこだわるのでしょうか?答えは一つしかありませんが、ここには「書けません」ので是非考えてみてください。

すべてが「世界標準」化です。世界のスタンダードに「やっと近付いて」きました。
 
最後に、平成28年度からはB型肝炎が定期接種になる予定です。対象は1歳にならないうちだそうです。  


Posted by ひげの小児科医 at 12:07クリニックからのお知らせ

2013年10月23日

「シーチキン マイルド」(はごろもフーズ)の自主回収に関して

もう新聞やテレビで御存知でしょうが、2013年10月11日に、「はごろもフーズ」の「シーチキン マイルド」の自主回収がテレビや新聞で報道されました。「アレルギーの症状が出る」とも表現されていたような記憶があります。

以下がその報道の一例です。

朝日新聞デジタル、10月11日分では、
「シーチキンを自主回収へ はごろもフーズ、672万缶
缶詰製造大手のはごろもフーズ(静岡市)は11日、主力商品「シーチキン マイルド」約672万缶を自主回収すると発表した。アレルギー症状の原因になるとされるヒスタミンが、一部の製品から社内基準を超えて検出されたという。
回収対象は「シーチキン マイルド」(558万缶)、「素材そのままシーチキン マイルド」(97万缶)、「シーチキン マイルド(キャノ―ラ)」(17万缶)。ふたに記載の製造所固有番号は「SO28」で、賞味期限は2016年7月7日~8月27日となっている。
同社によると、猛暑のため、原料のカツオを保管する工場の冷蔵庫の温度が下がらず、カツオに含まれる酵素が増殖したため、カツオに含まれるアミノ酸がヒスタミンに変質したとみられるという。「味に違和感を感じる」「舌がピリピリする」という問い合わせが計6件寄せられた。
静岡県焼津市内の委託業者が製造した。対象製品をはごろもフーズに着払いで送り、代金を受け取る。問い合わせは同社お客様相談室(0120・85・6004)」

このニュースをテレビで聞いてまたは新聞を読んで違和感を感じ、どこがどうなのかを考えてみました。
以下は単に私個人の考え(私見)ですので、それを御承知の上お読みください。

「シーチキン」は「はごろもフーズ」(静岡)の商標登録で一般名ではありません。もともと「シーチキン」という名称は、<「マグロ」または「カツオ」の「油漬け」または「水煮」の缶詰>で味が鳥のささみに似ているから、だそうです。
「シーチキン マイルド」はこの中で「カツオ」だけが原料であるものを指します。
自主回収される「シーチキン マイルド」の原料は、当然カツオです。
新聞報道では、上記の通り、自主回収対象の商品を食べた人の中で、「味に違和感を感じる」「舌がぴりぴりする」等の苦情があったそうです。
「はごろもフーズ」社内のヒスタミン濃度の基準値が50ppm(ppmは濃度の単位でparts per million、つまり100万分の1のことです)に対して、検出されたヒスタミンは200~500ppmでした。
いくつかの該当商品を調べての結果がそうですから、自主回収されるシーチキン マイルドの製品のなかにはそれを上回る量のヒスタミンを含んでいるものもあるはずですし、そうではないものもあるのでしょう。
ヒスタミンの急性毒性に対する無毒性量(NOAEL;No Observed Adverse Effect Level。毎日の摂取がこの量以下であれは健康被害が無いだろうと考えられる、動物実験から得られた値)は、FAO/WHO(国際連合食糧農業機関/世界保健機関)の基準では50mgです。
1ppmは1000000g中の1g、つまり1000kg中の1gですから、1kg中に1mg含まれる量です。500ppmでは1kg中に500mg、つまり100g中には50mg含まれる計算になります。
500ppmのヒスタミンを含んだシーチキン マイルドを100gを超えて摂取したら、含まれているヒスタミンの量が50mgを超えるので、「吐き気・嘔吐・腹痛・下痢・頭痛・顔面紅潮・発疹などのアレルギー様症状が出て、まれに呼吸困難や血圧低下を起こして重症になる」(日本版CODEX.。「食品安全に関するリスクプロファイリングシート(検討会用)、2012年)可能性があります。
1缶あたり「シーチキン マイルド」が165g、「素材そのままシーチキン マイルド」が75g、「シーチキン マイルド(キャノ―ラ)」が80gですから、「シーチキン マイルド」なら1缶の3分の2程度、それ以外の自主回収対象製品では1缶半を食べたら、上記の症状が出る可能性がある訳です。もっともシーチキン マイルドの缶詰を缶単位で食べることはあまりないと思われます。
とすると、症状が出た人は、部位によってはそれ以上の濃度のヒスタミンが含まれていたシーチキン マイルドを食べたのかもしれません。また逆に、該当のシーチキン マイルドをたくさん食べても症状が出なかったり、また症状が軽くて気がつかない方もいたはずです。
従って、このシーチキン マイルドは自主回収されますが、もし回収されずに市場に流通し続ければもっと大きな症状が出る可能性があることが判ります。

朝日新聞デジタル10月11日付けの上記の記事に違和感を感じたのですが、それはどこかわかりますでしょうか?

赤身が多い魚(マグロ、サバ、カツオ、カジキなど)の赤身の正体はヒスチジンというアミノ酸です。放置しておいた赤身魚を食べて「当たる」ことがありますが、それこそがヒスタミン中毒です。魚肉に含まれていた、ヒスチジン脱炭酸酵素(ヒスチジンをヒスタミンに変換する酵素)を持っている菌が増殖して盛んにヒスタミンをつくって、それを摂取して「当たる」のです。
酵素はタンパク質です。温度が下がらずに、カツオに含まれるアミノ酸(=ヒスチジン)を変質する酵素(=ヒスチジン脱炭酸酵素)が増殖するはずがありません。
一般的に、酵素は体温近くでその働きが最大になります。
冷温保存中で温度がそう高くなくても増殖する酵素であれば、生きているカツオはすぐにその酵素だらけになるはずです。
でも実際には決してそうではありません。
とすると、「カツオ(の肉)に含まれていた酵素が増殖してヒスタミンが増えた」は嘘です。
再度言いますが、タンパク質である酵素が、勝手に増殖するはずがありません。
では、正確にはどうなのでしょうか?

ズバリはっきり言います。
ヒスタミンが増えた理由はただ一つです。
保温が十分でなかったために、比較的低温でも活性を失わないヒスチジン脱炭酸酵素を持った菌が増殖して盛んにヒスタミンを生産した」のだと思います。
要するに、保管中に冷蔵が不十分で雑菌が増えたのです。
でも、菌は缶詰の作業工程での加熱で死滅していると思われます。酵素も無熱すればその働きを失います。
ヒスタミンは冷凍や加熱ではほとんど分解されません。
従って缶詰に残っていたヒスタミンは加工前にできたものです。
ヒスタミンだけを除去はできませんので、回収されるシーチキン マイルドは加工して市場に再度出すことができず、廃棄するしかないのです。
そういう理由で、常温の環境に赤身魚は長い時間置かない方がよい訳です。一旦ヒスタミンが増えたら、たとえ冷凍してから焼いても「当たり」ますから。
社内のヒスタミンの基準値がありながら、それを上回る濃度のヒスタミンが含まれた商品のチェックができなかったことも、事実として押さえておきたいところです。

今回のシーチキン マイルドのヒスタミンの件は、アレルギーではなく、ヒスタミンという化学物質のよる食中毒です。
ですから症状が出た人はアレルギーの症状なのではなく、食中毒なのです。
新聞やテレビもそう表現するべきところを「アレルギー様反応」で逃げたのです。また雑菌によるヒスタミンの増加を「酵素の増殖」と、現実にはあり得ないけど疑問もなく何気なく読むと「ああそうかも」と思わせるように発表した会社と、それを何の検証や点検もなくそのまま報道して、結果として嘘を伝えたテレビや新聞の責任はどうなのでしょうか。
でも、このように表層的な浅い記事では内容として嘘を隠しきることができずにその発表に矛盾を感じる読者は、決して私だけではないはずです。

ヒスタミンを多く含む食物には、発酵食品(ワイン、チーズ、ヨーグルト、発酵ソーセージ、味噌、醤油、魚醤、納豆など)がありますが、通常量の摂取では問題なしでしょう。
ヒスタミンは体内では不可欠な物質です。アレルギーや炎症において、また神経伝達物質として重要です。
また脳内においては、脳の活動を活発にする働きやけいれんを防ぐ役割があります。
なので、抗ヒスタミン剤(ヒスタミンの働きをブロックする薬)のうちで脳に移行しやすいものは、眠気をさそったり(=脳の活動が低下して判断力がにぶる)やけいれんを引き起こしやすくなります。
従って、眠くなり易い抗ヒスタミン剤は、そういう意味で危険です。
別の場所でも書きましたが、ザジテン(ジキリオン)、セルテクト、ペリアクチン、ポララミンがそうです。

アレルギーとは、体内に入った物質がIgE抗体に抗原として作用して、それが肥満細胞を刺激してヒスタミン(など)を放出して起きる免疫反応です。
初めからヒスタミンを多く含む食材を摂取して起きる、嘔吐や発疹などの症状は、アレルギーの反応と似ています(アレルギー様反応)が、免疫反応が無いのでメカニズムとしては明らかにアレルギーではありません

アレルギー様反応を起こす物質を仮性アレルゲン(「仮性」とは「偽の」という意味です)と言います。
仮性アレルゲンはたくさんあります。あくの強い物に多く含まれています。
ヒスタミンに関しては、ホウレンソウ、ナス、トマト、発酵食品、鮮度の落ちた赤身魚など、
ヒスチジンに関しては、チーズ、ピーナッツ、アボカドなど、
アセチルコリンに関しては、タケノコ、トマト、ナス、ピーナッツ、ソバ、ヤマイモ、サトイモなど、
グルタミンソーダに関しては、化学調味料(「味の素」などですね)。グルタミンソーダを多く含んだ食材を摂取すると、15~20分後に顔面紅潮、全身脱力などの症状が出ることがあり、「中華料理症候群」(Chinese Restaurant Syndrome)と言われます。
セロトニンに関しては、トマト、バナナ、キウイ、パイナップル、アボカドなど、
です。
その他に注目するべきものは、有機リン酸系や有機塩素系の殺虫剤が残留した食物(基準が甘いないしは基準が無い国から輸入した食品や、殺虫剤が残留しやすい油脂の部分など)、人工甘味料(アスパルテーム。コカコーラなどの糖分0を謳った飲料などに含まれる)、サリチル酸化合物(人工着色料、人工香料、防腐剤、保存剤など)でしょうか。
その他にもたくさんありますので興味がある方はインターネットで「仮性アレルゲン」で検索してみてください。

ついでですが、アレルギーに似ているものに「不耐症」があります。
これは、ある食物に関してそれを分解する酵素が欠けているあるいは少なくて分解できずに、それでアレルギー様の症状がでることです。
乳児で多いのが(2次性)乳糖不耐症です。急性胃腸炎のあとに数週間続く下痢では、この場合が多いと思います。これは牛乳や母乳に含まれている乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の働きが十分でないことで起こります。大人が牛乳を飲んでおなかがゴロゴロして下痢をする時がこれです。
アレルギー、食中毒、不耐症は明確に区別されるものです。
ただし迷う場合もあります。
例えば、サバを食べて蕁麻疹がでた場合がそうです。
サバに対するアレルギーなのか、あるいはヒスタミンの食中毒(仮性アレルゲンです)なのか判りにくいです。
そうい場合には、体調がよくなってから再度摂取してもらい経過を見るか、あるいはあくまで参考として血液検査をして判断するか、です。

ついでに赤ちゃんが汁物などで口の周りが赤くなるのは、アレルギーでも不耐症でも無く、化学的刺激による単なる「荒れ」です。
アレルギーでなく「荒れ」。
これを予防するためには、たとえば食事前に口の周りに保湿剤(ワセリンなど)を塗るのがよいと思います。  


Posted by ひげの小児科医 at 11:01クリニックからのお知らせ

2013年02月26日

インペアードパフォーマンス(Impaired Performance)について

インペアードパフォーマンスとは、抗ヒスタミン剤の内服で、眠気が自覚されずに、集中力・判断力・作業能率の低下を引き起こすことです。
適切な日本語訳がありませんが、「気付かれない能率低下」とでもいうもので、言わば「酔っ払い」の状態と同じです。
抗ヒスタミン剤とは、鼻水の症状で、耳鼻科などでよく処方される薬ですが、「効果が必ずある」という証拠は小児ではありません。
アレルギー性鼻炎では、アレルギーをひき起こすものが鼻孔に入ってくるとヒスタミンが放出されて鼻の粘膜の血管透過性が増え、それで鼻水がでると理解されています。
またヒスタミンは胃酸分泌にも関与しています。
ヒスタミンの促進作用としては、覚醒の増加、学習と記憶の増強、自発運動量の増加などがあり、
反対に抑制作用としては、摂食行動、ストレスによる興奮やけいれんに関与しています。従って抗ヒスタミン剤の副作用としては、覚醒の低下(眠くなる)、学習と記憶の低下(集中できない)、自発運動量の低下(起きられない、だるい)、摂食の増進(食欲が増える)、興奮する、けいれんしやすくなる、などがあり、それで以前は(今でもそういう医師はいますが)食べないこどもに抗ヒスタミン剤の処方をすることがありました。
またそのような理由で、けいれんをもっているこどもさんには抗ヒスタミン剤は慎重投与となっている訳です。
特に、ヒスタミン神経は、覚醒・睡眠メカニズム、大脳皮質機能活性化において重要な役割があります。
従って脳内移行性の高い抗ヒスタミン剤は、鎮静作用や認知機能障害を引き起こします(けいれんを起こすこどもさんへの慎重投与は、この類の抗ヒスタミン剤です)。
それらの脳内移行性の高い抗ヒスタミン剤は、
①ケトチフェン(商品名;ザジテン。ジェネリックではケトチフェン、スプデル、ジキリオン、ケトテンなど)
②ジフェンヒドラミン(商品名;レスタミン<小児科ではまず使いません>)
③オキサトミド(商品名;セルテクト。ジェネリックではオキサトミド、オキロットなど)
④クロルフェ二ラミン(商品名;ポララミン。ジェネリックはクロルフェ二ラミンなど)
で、ケトチフェンが断トツです。
逆に低いほうからは
①フェキソフェナジン(商品名;アレグラ)
②エピナスチン(商品名;アレジオン。ジェネリックにエピナスチンなど)
③エバスチン(商品名;エバステル。小児適応なし)
があり、アレグラが断然低い(ほぼ0)です。
インペアードパフォーマンスでは、自覚のない集中力や作業能率の低下が問題です。
眠気を誘う薬の方が、抗ヒスタミン剤として優れている、と考えている方が多いのですが、実はそうでは全然ありません。
私が大学生の時に風邪で処方してもらったポララミンを内服したら、翌朝だるくて起床できませんでした。
こどもが脳内移行性の高い抗ヒスタミン剤を内服していると、注意力や集中力が散漫になり、事故にあう可能性が高まります。
当院では、風邪症状では基本的には抗ヒスタミン剤の処方はせず、また蕁麻疹などで処方する場合も極力脳内移行性の低い抗ヒスタミン剤を選択し、ザジテン、セルテクト、ポララミンの処方はしていませんし、処方の希望があってもしません。  


Posted by ひげの小児科医 at 19:53クリニックからのお知らせ